オープンソースと企業の関係はクマノミとイソギンチャクの関係に似ている

先に起きた接触検知アプリの件では、オープンソースのコミュニティが開発したプログラムをベースにアプリが開発されました。恐らくITに関わっていない人にとっては有志の団体であるオープンソースコミュニティが開発したものを政府が(厳密には政府から委託を受けた企業)が引き取って製品に活用するということがどういうことなのかよく分からないのではないかと。

いわゆる企業とオープンソースコミュニティの関係性はざっくりいうと、自然界の共生関係、たとえばクマノミとイソギンチャクの関係に似ているのです。

自然界における共生関係

自然界における共生関係とは、異なる生物がお互いに恩恵を受けながら共存する関係のことです(正確には相利共生と言います)。

相利共生 – Wikipedia

例えば、イソギンチャクとクマノミの関係。クマノミとは、映画ファインディングニモで有名になった熱帯魚です。イソギンチャクの触手には毒がありますが、クマノミは特殊な身体のおかげで針がささりません。このため、クマノミはイソギンチャクの触手の中で外敵から身を守りながら生きることが出来ています。

一方のイソギンチャクは、クマノミがイソギンチャクの触手の中を餌の置き場にするため、その一部を自分の食べることが出来ます。また触手を傷つける外敵からクマノミに守ってもらっています。まさにWin-Winな関係性と言えます。

オープンソースコミュニティと企業の相利共生

オープンソースのプロダクトにもよっても多少事情は異なるのですが、一般的には企業とオープンソースコミュニティの関係性もこれに近いものがあります。

企業側(あるいは個人)は、ソフトウェアのプログラムコードを無償で公開して、誰でも利用、改編できるようにします。これによってそのソフトウェアを中心としたコミュニティが産まれてきます。

企業の側はソースコードを多くの人に公開することで、自社のソフトウェアが多くのエンジニアの目に触れ、様々な技術的な知見を自社にソフトウェアに取り込むことが出来ます。自社内だけで行うより低コストで高品質な製品になりやすいです。

一方のオープンソースコミュニティ側の人は、オープンソースのソフトウェアの開発に関わることで、知的好奇心を満たしたり、個人ではなかなか関わることの出来ない世界的なソフトウェアの開発に関わったり、あるいはその活動が蓄積されることで長期的なキャリアップにつながったりします。

まさにクマノミとイソギンチャクのようなWin-Winの共生の関係がある言えます。

日本のITが発展するにはITカルチャーに対する理解が必要

接触検知アプリの件に関して、リリース時に不具合が見つかり、開発者の方に批判が集まりました。ただ、批判をした人の多くはあの人がどういう立場の人かを理解していなかったように見えました。

オープンソースの開発者はあくまでの有志の人であって、責任者は別にいたはずなのですが、それがうよく理解されていなかったようです。

また、不具合に関しても、ないに越したことはないですが、今回のリリースは、いわゆるベータ版のような位置づけであったので、スマホにインストールする場合、検証作業に協力するくらいの気持ちで入れるべきだったのですが、それが周知されていませんでした。

オープンソースにしろ、ベータ版にしろ割と昔からITの世界には存在する考え方なのですが、IT系以外の日本人にはあまり理解されていません。

日本は製造業での成功体験が強く、中身をブラックボックスにして、完成時に最初から高品質の完璧な製品を求める傾向が強いですが、ITの場合、最小機能で小さくテスト的にリリースして広く公開し、徐々にブラッシュアップするやり方のほうが最終的にうまくいくことが多いです。

この当たりのITのカルチャーがきちんと理解されないと日本はどんどんIT後進国になるなぁと感じています。

今日のアクション

今回の記事は、オープンソースってまだまだ一般的には理解されていないなぁと感じたので書いてみました。少しでも理解が広まればいいなぁと感じています。