いろいろなこと幅広く知っているけれど、どの分野にも自分より詳しい人がいて結局中途半端。これが私の自分に対する自己評価です。もっと特定の分野に特化したほうがブロガーとしても面白いのではと、いつも感じています。
ですが世の中には、自分の専門分野に特化しなかったから成功した人がたくさんいます。知識の幅広さは武器になるのです。
英才教育のタイガーウッズと幅広くスポーツをしたフェデラー
スポーツの世界では、スター選手になる人は皆子供のころから英才教育を受けていると考えがちです。ゴルフのタイガーウッズは、まさにこのタイプで子供ころから厳しいトレーニングを受けています。
ですが、実はスポーツの世界のスター選手では、英才教育を受けて育った人よりも子供ころは、他の子供達と普通に遊び、複数のスポーツを楽しみ、かなり遅くに自分が進む競技を選んでいる選手のほうが多いのです。
テニスのロジャーフェデラーは、両親から英才教育などは一切受けずに育ち、テニスに集中するようになるころには、周りの同年代の選手はトレーナーをつけて長年トレーニングを積んだ状態でした。ですが、彼は30代半ばになっても世界ランキングで1位をキープし続けているのです。
のちにフェデラーは様々なスポーツを経験したことで、運動神経や反射神経が養われたと語っています。世の中の話題として取り上げられやすいのはウッズですが、実際はフェデラーのような選手のほうがスポーツ界には多いのです。
そしてこの関係性はビジネスの世界にも当てはまることが分かって来ています。
テクノロジーの開発において、さまざまな分野で経験を積んだ人のほうが、一つの分野を深めた人よりも、クリエイティブで影響力の大きい発明ができることだった。実際、キャリアの中で積極的に深さを犠牲にして幅を広げ、成功していた人たちがいた。芸術分野でのキャリアに関しても、同じような研究結果があった。
イノベーションは境界を越えたところに生まれる
企業や個人事業主の方向けのビジネスコンサルをしている知人が、「ある業界の常識は、別の業界の非常識。同業他社と差別化するのは、違う業界のビジネスモデルが参考になる」と言われたことがあります。
早期に専門に特化することは、一見合理的なように見えますが、その分野の常識に染まりすぎてしまい、発想の転換が利かなくなる可能性があるのです。
それよりも一見関係のなさそうな複数の分野の類似性(アナロジー)を見つけることが問題解決の早道であったりします。
彼らには「幅(レンジ)」があった。 成功した人たちは、ある分野で得た知識を別の分野に応用するのがうまく、また、「認知的定着」を避けるのも上手だった。彼らはホガースが言うところの「遮断装置」を用いていた。つまり、外部の経験や例を活用して、もはや効果がないかもしれない従来の解決方法に依存する傾向を遮断していた。
スティーブジョブスもカリグラフィーの授業を受けていなければ、マッキントシュの書体は無かったと言っています。幅広い知識こそが新しいイノベーションを生み出すのです。
深い知識よりも未知の状況に対する対応力
自分の専門分野を持っている人の中には、知らないことに対して相手をバカにするような態度をとる人が結構います(エンジニア系の人には多いかも)。ですが、実際のところ、今のような変化の激しい時代においては必ずしも今、最新の知識を知っているということが価値になるとは限りません。
それよりも未知の知識や技術と遭遇したときに、如何に素早くその本質を理解し、自分のモノに出来るかのスピードが重要です。
新しい知識を素早く吸収するために必要な力とは、基本的な読解力や、理論的に考える力に加えて、自分がすでに知っていることを新しいことに当てはめて考える力が必要になります。自分の中に幅広い知識があれば、新しい知識に対しても吸収する速度はあがるはずなのです。
訓練の幅の広さは、応用の幅の広さにつながる」。言い換えると、多くの文脈で学べば学ぶほど、学習者は抽象的なモデルをより多く構築するということだ。学習者は、これまでに見たことがない状況に知識を応用するのがうまくなる。これこそが、クリエイティビティーの根幹だ。
ITの世界では、昔プログラマ35歳限界説というのがありましたが、最近はあまり聞きません。これは、結局のところ、現在流行している技術というのは、過去の技術の上になりたっているものなので、本質を分かっている人なら、それなりのスピードで吸収できるからなのでしょう。
この時代は変化に対応できる力こそが一番必要なのです。
今日のアクション
スポーツ、芸術、ビジネスと幅広い分野について、知識の幅の重要性をといている良書です。これだけ対象ジャンルを広くしている本はあまり見たことがないので一読の価値ありです。