ソニーと言えば、日本を代表する企業です。ほんの数年前までは経営不振にあえいでいましたが、近年、一気に復調し、2020年には過去最高益を更新しています。その礎を作ったのが、元CEOの平井一夫さん。
ソニーの中でも音楽出身の平井さんがCEOになれる土壌があったこと。それがソニーと他の違いなのかもしれません。
異端出身の社長が見せる3度の復活劇
ソニーの元CEO平井一夫さんは、もともとはCBS・ソニーというソニーグループの会社出身です。そこからアメリカでSCEA(ソニーコンピューターエンターテイメントアメリカ)の社長になり、アメリカでのプレステの販売を指揮します。当時、人間関係がものすごく悪かったSCEAの風土を改革し、業績に立て直しに成功。
その後、日本に戻り販売不振だったプレステ3を立て直すため、SCEのCEOに就任。ゲーム機として、価格が高すぎて売れなかったプレステ3のコストカットに成功し、販売を軌道に乗せます。
そして、2012年にはソニーのCEOを就任。改革を続け、冒頭に書いた過去最高益を実現します。
本書には、エレクトロニクスの会社という意識の強いソニーにおいて、音楽出身に平井さんが、どのように考えて組織を立て直しをはかっていったかが書かれています。
平井さんも凄いがそれを許容する風土があったのが凄い
私が就職活動をしていた2000年前後と言えば、ソニー以外にも、多くの家電メーカーの製品が世界中を席巻していた時代でした。ですが、その後多くのメーカーはかっての輝きを無くし、中には本当に消滅してしまった会社もあります。
そのような中、ここ数年のソニーの復活劇。
私はこの平井さんのような異端の人がきちんと組織の中で上に上がっていける風土が残っていたことがソニーの素晴らしいところであり、他のメーカーとの差が生まれたのではと感じました。
平井さんは、本書の中で異端出身と自分のことを書かれていますが、実際に取り組んだ一つ一つのことを読んでいくと、社員とのコミュニケーションを丁寧にして課題を見つけ出すことや最後は自分が責任を取る姿勢を見せるといった、リーダーとして基本に忠実な取り組みを丁寧に行っていったことがわかります。
実際、2000年代以降に衰退した企業のドキュメンタリーなどを見ると、技術競争で海外勢に負ける前に、内部の権力争いに終始して、組織が崩壊してしまっているケースが多くあります。
恐らくですが、先に挙げたソニー以外の会社の中にだって、問題意識をもった優秀な人はいたはずです。ですが、衰退した組織においては、そのような人達はいたけれども排除されてしまったのではないかと感じました。
ですが、ソニーには土壇場で異端のリーダーを受け入れる土壌があった。ここが大きな差な気がするのです。もちろん、平井さんのリーダーシップが素晴らしいのは大前提です。
リーダーが先か、リーダーを生み出す土壌が先か
組織や社会が変わっていくためには、優秀なリーダーが必要なことは間違いありません。ですが、優秀で素質のある人がいたとしても、それを受け入れる土壌がなければ、リーダーは生まれません。
普段、私はそんなに政治に興味がありませんが、そんな私でもここのところ、政治家の人達の言動にはかなりイライラしています。
ただ、その政治家を選んでいるのは我々国民なのは間違いありません。リーダーが頼りないのは、結局我々に見る目がないからと言われればそれまでです。一方で、我々は正しい方向へ導いてくれるリーダー(この場合は政治家)を求めていたりもして、堂々巡りとなり終わりがありません。
本書の中で平井さんは、窮地に立たされている中でもソニーの社員の心の中にマグマを感じたと何度も書かれています。おそらく、多くの社員の心の中にがそのマグマがあったことが、ソニーが復活出来た理由なのでしょう。
今日のアクション
プレイステーションをはじめ、パソコンのVAIOやテレビのブラビアなど、よく知った製品が出てくるのもあり、スッと読み進めることが出来ました。リーダーシップとはどう生まれるのかを考えるのに参考になる本です。おすすめします。