個の時代には挫折と対峙する力が必要〜【読書レビュー】対峙力

これからは個の時代、そういわれて結構時間が経っています。煩わしいしがらみがなくなり、自分の個性で生きられると言われていて、諸手をあげて喜んでいる人が多いですが、私はそんなに簡単ではないと感じています。

個の時代とは、本当の意味で弱肉強食という意味ですし、やはり何より自分も含めた多くの人は言うほど個があるわけではない、その他大勢の人なのではないかと感じているのです。言うほどの個のない我々のような人間がどうこれからの時代に生きていけばいいか。参考になりそうな本を見つけました。

対峙力 誰にでも堂々と振る舞えるコミュニケーション術 

著者は寺田有希さん。元大手芸能事務所の女優さんを契約解除になったあとにフリーに転身し、今も芸能活動を続けられている異色の経歴の持ち主です。

対峙力、それは挫折と向き合える力

私がこの本を興味を持ったきっかけは、その対峙力というタイトルから。一体何と対峙するのかがちょっと気になりました。

一応コミュニケーション術というサブタイトルがついているので、人と向き合うことをテーマに書かれているかと考えましたが、実際は読むと人と向き合うことを入り口に、仕事、自分、そして将来の夢という4つの切り口で書かれています。

著者の寺田さんは女優を目指し、大手芸能事務所にスカウトされながらも、大学卒業と同時に契約解除という大きな挫折を味わっており、全体を通してこの大きな挫折と向き合い乗り越えて行ったが大きなテーマとなっています。

寺田さんはその後、紆余曲折を経て、YouTubeなどで堀江貴文さんの番組のアシスタントを勤め、有名企業家など大物が登場する番組においても物怖じすることないスタイルが好評を得ています。

そして、MCのお仕事をする傍ら、女優業も続けられていて、まさに人生の挫折との対峙力とも言える本となっています。22歳で芸能事務所の契約解除となったあと、どう自分の夢と向き合って来たのか。そのマインドセットが書かれた本です。

スターになれなくても「必要とされる人」にはなれる

あなたにも必ず何かの才能があります。その才能を活かすことで、必要な一角になることはできると思うのです。  だからこそ、「いまのままの生活じゃダメだな、何かしなきゃ」と思い立ったとき、「あの人のやりたいことを応援できそうだから、支える側に回ろう」みたいな生き方もありなんじゃないかな、といまは思っています。  そうすれば、持っている素質の違いに悩むこともありません。  誰かのやりたいことに共感できたら、その人を支える立場に回ればいいんです。  支えられる人は、どんなときでも役に立てるし、「その場にいてほしい人」になれます。

寺田さんは、事務所を契約解除されて、あきらめずに活動していくなかで自分が、周りを引っ張っていくポジションよりも人を支えるポジションのほうが向いていると自覚していったそうです。これ、さらっと書いているのですが、女優を目指していた人が受け入れるのはかなりキツいだろうなと。

ただ、スターやリーダーになるということ自体に捕らわれていた自分にも気が付いたとのこと。そして、今は支える側で力を発揮しています。

個の時代って、ワクワクする反面、ある意味ではものすごく冷徹な時代でもあると感じています。これまでの時代はなんとなく、集団の中でふわっとごまかせていたことが、ある日突然通じなくなったり、否応なしに自分の力不足を認識させられる時が来ます。

だからこそ、憧れや理想だけではなく、自分はどこで輝ける人なのかをきっちり冷静に見極めておく必要があります。

「好きを仕事に」したいなら違うこともやる

「女優になるなら、芝居の仕事以外はしちゃいけない」などといった狭い価値観で可能性を狭めてしまうのは、もったいないと思います。レストランのアルバイトをしていた時間が無駄だったとは思いません。「王道ルート以外は全部回り道」と思っていたら、どこにも進めないから。

寺田さんは、芸能事務所を辞めた後、堀江貴文さんの番組のMCなどを経て、女優の仕事を再開されています。とりあえず、来たチャンスに乗ってみるという精神があったからその後の展開があるのでしょう。

インターネットとSNSが発達した今の時代、昔に比べて仕事と仕事の境界線、業界と業界の境界線がうすくなっているように感じます。芸能では言えば、今は芸人さんがYouTubeをすることもあれば、YouTuberさんがテレビに出ることもあります。

一見関係のなさそうな経験でも、思わぬところでつながっていて、新しい道が開けることがあるので、私はこれしか出来ないと決めつけてかかるのは、チャンスを逃しているような気がするのです。

今の目の前の仕事が自分の目指しているところとは違うと感じても、とりあえず全力でやってみることで何か見えてくるかもしれません。

ただ、人生の分岐点で判断を間違わないように、進みたい方向だけは見失わないこと。どんなルートであれ、大きな価値観だけは定めておくこと。そのために、「自分は何者でいたいのか」を常に問い続けていること。  そうすれば、途中でどんなに他人と比べて焦ったり迷ったりしたとしても、やがて自信を持って歩める道が見えてくるのだと思います。

私は、割とこうやって自分を見失いがちなので、気をつけます(自戒)。

今日のアクション

全体として、著者の経験から発せられている言葉に説得力があり、元気つけられる本でした。

22歳で人生の夢に破れるというのはとても大きな挫折で、一生引きずる人もいそうですが、それを寺田さんがどう乗り越えたのかはいろいろな面で参考になります。今、人生の目標を追いかけている人、あるいは挫折を感じてもがいて人におすすめの本です。