全ては観察力から始まる〜【読書レビュー】観察力の鍛え方

写真を本格的に撮るようになって気が付いたのですが、良い写真が撮れる人って写真の技術うんぬんの前に被写体に観察力が鋭いです。目の前のあるものが写真として絵になるかを敏感に見抜きます。

写真に限らず、物事が成功する人と失敗する人の差は何かと考えると、実践力と行動力だと考えていました。ですが、それらはもちろん大事な要素でありつつも、一番大事なのは、観察力なのではないかと写真を始めてから考えるようになっています。

観察力の鍛え方 一流のクリエイターは世界をどう見ているのか

では、観察力とは何か。著者は井上雄彦氏の「バガボンド」をはじめ数々のヒット作を生み出して来た敏腕編集者。ヒット作を生み出した観察力について書かれています。

観察とは問と仮説の無限ループである

観察は、問いと仮説の無限ループを生み出すもので、その無限ループ自体が楽しいものであるため、マンガをはじめとする様々な創作の源になりえる。「観測」は、観測自体が目的になるが、「観察」は自分で見つけてしまったがゆえに解きたくなる「問い」とセットでモチベーションになりえるのだ。

お笑い芸人さんは、日常のちょっとした出来事もおもしろおかしく話すことが出来ます。これは、芸人さんが日頃からこれはネタになるかということを考えているからです。どうすれば人を笑わすことが出来るかという問に対して、いろいろな切り口から仮説を立てているのです。

写真についても、上級者の方は無意識のうちにどうすれば綺麗な画が出来るかという問を立てています。そしてそれに対して、こういう構図、光の当たり方という具合に仮説をいくつも立てて撮影しています。

一方、写真の初心者には普通、自分の中にどうすれば良い写真が撮れるかという問がありません。また合ったとしても、こうすれば良いはずという仮説が出てこないはずです。観察力とは、問と仮説を立てる力だとも言えるのです。

観察力が鍛えられてくるとインプットの質は上がる。特別な努力をしなくても、日常的に質の高い情報がどんどん蓄積される。そしてインプットが溜まってくると身についてくるのが、俗にいう「感性」と呼ばれるものだ。

観察とは徹底的に真似ることである

若い頃にやりがちだったのですが、何ごとも自分流を貫こうとして、結局何も身につかないみたいなことが結構ありました。ですが、こういう場合だいたいうまくいきません。多くの場合、自分流を貫きたいという気持ちは、上達の妨げになります。

真似を続けていると、型の存在に気づく。そして、その型について、なぜ生まれたのかなどを自分なりに考える中で、型が身につく。型を通して、観察ができ、仮説が立てられるようになるまで、真似をし続けて、型を身につけることを、僕はいつも意識している。

ポートレートの撮影をする時も、モデルさんにどんなポーズとってもらうかは、自分の中に引き出しが無ければ指示を出すことは出来ません。結局は、写真集などを見て、自分の中に引き出しを沢山作った上で、それらを真似るところからしか出来ません。

いわゆる守破離という言葉があるように、型を身につけて、なぜそれをするのかを体得出来たら、それを崩すことで観察力は磨かれるのです。

オリジナリティとは、型がないのではない。  型と型を組み合わせるときに生まれる。いかに遠い型と型を組み合わせるかが革新を生み出す。

観察すればするほどわからなくなる

我々は何か問に対して、唯一無二の解が存在しているとついつい考えてしまいがちです。だから観察を続ければ、何か正しい答えが見るかるはずだという前提に立って考えてしまいがちです。ですが、そのような正解を求める行為は、観察とは言わないのだと感じています。

学校教育で言われる「わかる」とは、基本的に作業の手順を「知っている」ことを意味する。知りさえすれば、わかるになり、社会の中で価値をもつ。司法試験も、医師国家試験も、国による様々な資格は、知っているかどうかを確認するものだ。

観察のゴールをものごとを理解することであれば、そこで思考は停止してしまいます。コミュニケーションにおいても、人の話をあまり聴かない人はわかったつもりになって話を切り上げてしまう人が多いです。

ですが、世の中の多くの現象事象は、深く観察すればするほど、わからないことが増えていくことのほうが多いです。観察するとは、その沼にはまり込む行為なのかもしれません。まさに観察とはあいまいさを受け入れる行為なのです。

だからこそ、写真などのアートは面白いし、人々を引きつける。私はそのように感じています。

わからない状態に身を置き続けるとは、思考を停止しないということだ。観察をし、仮説を立て、問いを見つける。それを続ける。

今日のアクション

写真にかかわらず、ブログなどのあらゆる表現活動をしている人にとって金言が含まれた本でした。とても参考になるので、是非読んでみて下さい。