正しい複業は本業との相乗効果を生み出す〜【読書レビュー】なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか?

働き方改革とか複業解禁とか言われていますが、実際のところなぜそういう施策が必要なのかという部分が結構ぼやかされている気がしています。複業をすれば本業がおろそかになる、そういった考えもまだまだ根強いです。理想的な複業の形とはどのようなものでしょうか。

なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか? 偏差値37のバカが見つけた必勝法

本書は、日本でミシュランの星付きのレストランを営んでいた著者がサイゼリアでバイトをすることで大企業ならではの生産的な仕組みを学んでいき、自らの仕事のスタイルを変えていく話です。まだにここに理想の複業の形がある気がしています。

なぜ複業が必要なのか

ここ数年、複業解禁が大きなトレンドになっています。その理由は複数あると言われていて、企業が終身雇用を維持出来なくなったからとか、労働者の収入の低下であるといったマイナスの要素を労働者自身が補うためだと言われています。

もちろん、それらの理由はあるのでしょうが、私は産業が複雑化して一つの組織や業界のカラーに染まっては新しい発想が生まれないからというもの大きいのではないかと感じています。

これまでの日本の教育も企業も端的に言うと同質な人が集まる場でした。ですが、知的財産がものをいう時代にはこれが通じなくなって来ているのです。

組織に属しつつもその構成員が異なるバックグラウンドを持てるような仕組みとして、複業を取り入れるという考え方がある気がしています。

好きなことや得意なことを伸ばすんじゃなく、欠点をなくすのが、日本の教育です。「個性を伸ばす」と言いつつ、普通の人とちょっと違うと「空気を読め」とか「オタク」と言われて、落ちこぼれ扱いされます。  この教育は、組織の中で働く従順な労働者をつくるのには、うまく機能します。でも、サバンナでは真っ先に食べられてしまうでしょう。

理想の働き方はサイゼリアにあった

本書の著者 村山太一さんは、目黒でかってミシュランで一ツ星を獲得した名店の料理人です。一見大成功しているように見えるのですが、その実、長時間労働が常態化して経営はギリギリの状態だったそうです。

村山さんは、このレストランの状況をなんとかするためには大手のチェーン点のノウハウを学べばいいのではとサイゼリアでバイトし始めました。そしてその生産性の高さに驚かされたそうです。

僕がずっといた高級店の世界では、「仕事は盗んで覚えろ」が常識。仕事をロクに教えてもらえないし、先輩は常に上から目線で下にいばり散らしていました。  ところが、サイゼリヤでは高校生でも「こっちのお皿から洗ったほうが早いですよ」なんて教えてくれる。僕がモタモタしていても怒鳴られることはないし、手を貸してくれる。働きやすい職場とはこういうものなんだ、と僕は感動のあまり涙ぐんでしまったぐらいです(笑)。

ファミリーレストランは高校性でもアルバイトが出来るように業務が仕組み化されています。これは、職人の世界とはまるで真逆です。裏を返せば、仕組みさえ整えてしまえば生産性が一気に高まる可能性があるのです。

本書の事例は、飲食業界の話ですが、おそらく日本のあらゆる業界に、同じような問題は転がっています。例えば、今話題のハンコ。より効率的な方法があるのに、特定の組織や業界のカラーに染まってしまうと過去のやり方をすれられないケースというのは多々あります。

複業をすることで今のやり方の問題点に気付け、新しいやり方を発見できる。これは複業の最大のメリットだと私は考えています。

フラットな関係性を築ける

複業をする上でもう一つのメリットは、一つの組織にヒエラルキーから自由になれるという点だと考えています。いわゆる会社人間と呼ばれる人ほど、組織内での役職=自分のアイデンティになる人が未だに結構います。

なんらかの理由で会社を辞めた途端に、それまでの付き合いも全て無くなったと愕然したというのは、よくある話で組織内での役職とあなたの人間性は別物なのです。特にある一定の年齢を超えるとまわりが年下ばかりになるのでなおさらです。

驕り高ぶらず、思考停止しないためにも、何でもいいから自分が一番下っ端になれる場をつくっておくのは大事です。  例えばゼネコンの社員は、孫請けの土方に仕事を発注しますよね。もしその孫請け会社でバイトをしたら、そこで働く人の気持ちがわかるし、実際に現場がどう動いているのか体感として理解できるので、きっとよいリーダーになれると思います。

相手の年齢が年上でも、年下でも、フラットな関係性を築けるようになるという意味でも、複業には大きな効果があるのです。

本書では、バイトを事例にしていますが、現代はバイトで無くても、インターネット上にオンラインサロンなどの様々なコミュニティがあります。面白いプロジェクトをやっているところもたくさんあるので、そういうところにまず顔を出してみるのも良いかもしれません。

今日のアクション

こういう複業の形があったら理想だなあと漠然と感じていた部分を著者の村上さんが実践していてとても素晴らしいです。これから複業をはじめたい方にも参考になる本です。