35mmのレンズが欲しい。
ポートレートを撮るとき、これまでは50mmと85mmを中心に使ってきました。人物をきれいに見せるという意味では、この2本はとても使いやすい。特に85mmは背景を整理しやすく、被写体をしっかり浮かび上がらせることができます。
ただ、それだと屋内では少し焦点距離が長い。やはり、35mmのレンズが欲しかったのです。そんな時、新宿のフォトベルゼさんで運命の出会いをしました。
CONTAX Carl Zeiss Distagon T 35mm F1.4。以前からきになっていたレンズです。今回思い切って衝動買いしてしまいました。さっそくレビューしてみます。
CONTAX Distagon 35mm F1.4とは
CONTAX Distagon T* 35mm F1.4は、Carl ZeissがCONTAX/YASHICAマウント向けに設計した大口径広角レンズです。
1970年代に登場したレンズで、レンズ構成は8群9枚、最短撮影距離は30cm、重量は約600g。非球面レンズとフローティング機構を採用した、当時としてはかなり贅沢な設計です。
製造時期や生産国によっていくつかのバリエーションがあり、ドイツ製は「AEG」「MMG」、日本製は「AEJ」「MMJ」などと呼ばれています。
今回購入したのは西ドイツ製(結構レアです)。

だから写りが日本製より優れている、という単純な話ではないです。それでも「WEST GERMANY」と刻印された50年近く前のレンズを、2026年のデジタルカメラにつけて写真を撮る。
それだけで少し楽しい。
ですが、このレンズはオールドレンズの中では比較的高価です。スペックだけを考えれば、現代にはもっと軽く、AFも速く、解像する35mm F1.4がいくらでもあります。オールドレンズなので、当然マニュアルフォーカスです。買うなら現代の写りの良いレンズのほうがいいのかもしれません。
ですが、フォトベルゼさんでこのレンズを試しに自分のカメラにつけた瞬間に、その手触りに自分の中のディオ・ブランドーが叫んでしまったんです。
フッフッフッフッフッ・・・このレンズのおかげだ!本当によく馴染む!
最高に「ハイ!」ってやつだアアアアアアハハハハハハハハハハーッ
はい、即決で購入して持ち帰りました。
思っていた以上に「現代的」なレンズ
購入してから実際にポートレート撮影で使ってみました。
最初に驚いたのは、思っていた以上にクリアに写ることでした。
オールドレンズというと、フレアが出たり、コントラストが低かったり、少し柔らかく写るイメージがあります。
Distagon 35mm F1.4にも当然、現代レンズとは違う癖があります。
ところがピントが合ったところを見ると、意外なほどしっかり写っています。
作例1:浅草スナップ
35mmといえば、まずはスナップ撮影。さっそく夕方の浅草をこのレンズをつけて取り歩いてみました。

前提として、35mmという画角は、建物や看板、通行人など街の情報をある程度残しながら、それでも広角すぎて散漫になりにくいところが使いやすいレンズです。
この写真でも、左右の店舗から奥へ続く道までしっかり写っていますが、極端なパースが付くわけではなく、実際にその場所を歩いているときの視界に近い感覚があります。
この写真をみればわかりますが、オールドレンズとは思えないシャープな写りです。ですが、決して現代のレンズほど、カリカリではない独特の柔らかさがあります。
みているだけでどこからノスタルジックさを感じる写りです。
作例2.屋外人物ポートレート
そして、本命の人物撮影。特に印象的なのが、人物を撮ったときの立体感です。

なんかね、被写体が浮き出してくるんです。なんだこの立体感。ピント面だけがカリカリに鋭い、という感じではありません。それなのに、人物が背景からすっと前に出てくる。
背景を大きくぼかして無理やり人物を分離するのではなく、階調やコントラストによって人物と背景の間に奥行きが生まれているように見えます。
この立体感については、Distagon 35mm F1.4の特徴として挙げるユーザーも少なくありません。
作例3:背景を含めた屋内ポートレート

そして、そもそも35mmが欲しかった最大の理由。
人物だけでなく、その人がいる場所まで写せること。
85mmで撮るポートレートでは、どうしても背景は「整理する対象」になりがちです。一方、35mmでは背景そのものを写真の要素として使えます。
椅子や窓、壁、光、そこに置かれた物。
そういったものを残しながら人物を配置すると、単なる人物写真ではなく、少しだけ物語が生まれる。最近、自分が撮りたいと思っている写真はこちらです。
ただきれいに人物を撮るだけなら、それだけでは少し物足りない。その人が「どこにいたのか」「どんな時間だったのか」まで写真の中に残したい。35mmという画角は、その距離感にちょうどいいと感じています。
不便だけど、それも含めて使いたくなる
このレンズは、もちろんマニュアルフォーカスです。
人物撮影ではピント合わせも大変ですし、肝心なところでピンが合ってないこともよくあります。仕事ならSIGMAなど現代のAFレンズを使ったほうが圧倒的に確実です。
しかも、600gあるので、35mm単焦点としてはかなり重い。便利なレンズではありません。
それでも、撮影に持っていきたくなる。
確実に、このレンズでしか撮れない写真というより、このレンズだから撮りたくなる写真がある。
今はそんなふうに感じています。
これからポートレートだけではなく、街のスナップや旅にも持ち出してみたい。
50年近く前に作られた西ドイツ製のレンズを、最新のデジタルカメラにつけて街を歩く。
しばらく、この少し不便な35mmを楽しんでみようと思います。
今日のアクション
というわけで、オールドレンズにしては結構なお値段のレンズだったのですが、今のところ、満足感半端ないです。たぶん理解されない人には、一生理解されない世界ですが、本当に幸せです。今はさすがに暑いので撮影のペースを落としていますが、もう少し涼しくなったらさらにバンバン撮影していく予定です。


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